メンバーにはひたすらの「ありがとう」と「楽しかった」と「がんばって」を、そして「謝らないで」を

ボクは過去に乃木坂メンバーの卒業/活動辞退を採りあげたことがありません。
ひとつには、「後追い」の — シングル的には6th期からの
『Rの法則』のワカツキ(若月佑美)と「こども相談室」のななみん(橋本奈々未)を
入り口として追い始めたファンであるため
多くの卒業メンバーをリアルタイムではほとんど知らなかったゆえ。
もうひとつには、ほとんどの卒業が同意の上での、当のメンバー自身の人生上の決断であるのなら
そこにファンがどうこう言うことは何もない、と考えるゆえです。



ある2ケースにおいては、「もしかして?」と思うこともなきにしもあらずですが、
これまた「言ってどうなる?」「だとしたら何?」ってなものでしかなく、
そもそもとある暗号解析に依拠する真偽定かならぬ推測ですので
やはり書かずに済ませるに如くはなし、と考えています。
とあるブレードランナーの勇気と正義感を一部のファンだけが心中で賞賛しておけばいいのだ、と。



さはあれ、今回の一挙3人の卒業/活動辞退はさすがにこたえました。
もちろん、彼女たち自身による声明を疑う理由こそないものの、
乃木坂46運営方針全体がもう少しだけ、ギリギリながらでも十分にと言えるだけ
フェアで余裕があって遠望ヴィジョンに基づいていてフレクシブルで
コスト/ベネフィット計算に寛容であれるなら
今回のような形の卒業/活動辞退はなかったのではないかと思い、
誰をどう責めるというでもなく、ただただ残念の想いがつのるのです。



ねねころ(伊藤寧々)は、映画『杉沢村都市伝説 劇場版』で主演を果たし、
ブログにも
「自分の夢だったお仕事が叶ったこと、
 次のやりたいことが見つかったこととの
 2つが大きな決め手になりました。」
とあることから、前向きで順当な卒業と言っていいのでしょう。
「不思議と楽しみな気持ちもあります。」
「乃木坂46という名前に支えられ守られていた場所から
 1人でどこまでいけるのか色んな世界を
 みてみたいと思うようになりました。」
にはしっかりした強さと出発の歓びも感じられます。    ※1
どんなフィールド/ステージであれ、おそらくは「女優業」のラインでの
これからの活躍を楽しみに見守るのが容易な、力強い声明だと思います。

京ちゃん/米徳ちゃん(米徳京花)は中学3年生で
以前から高校受験のための一時休業は発表されていました。
元々、文武両道がんばり屋さんのエリート少女という人格は見えていましたから
当然「学業を疎かにしない」旨の約束の下に親御さんの許可を得ての芸能活動だったでしょうし、
長い人生を考えればまだまだ先にいろんな選択肢が見え
その視点からは、高校生になってからもますます学業が大事かつ大変、ということかもしれません。
しかし、それでも —

りさこ(矢田里沙子)は短大2年生で
京ちゃん同様、以前から短大卒業のための一時休業は発表されていました。
したがってりさこファンはもちろん、「推し」というほどではないファンだって
無事短大を卒業できた暁には一気に活動が活発化するものと思っていたことでしょう。
この「峠」を越えてもその先にまだ高校・大学が待っているであろう京ちゃんと比べれば
そして大学に進んだ/卒業した他メンバーと比べても
りさこのフルタイム活動は2015年3月以降始まる筈、それまで楽しみに待っていよう、と。
同意:同意の上での、一時的なさみしい気持ちを耐え忍ぶだけだ、と。
それだけにあと6、7ヶ月が、いわば「待ってもらえない」ゆえの「活動辞退」 —
「やるか、それともやらないか、どっちかを自分で決めなさい。われわれはもう待てない」式の
最後通牒のようなことがあったのではないか、と
胸の悪くなるような、ゾっとするような想像が湧いてくるのを止められないのです。
りさこは発表の本日(2014/09/12)現在、まだ今後の進路のことをブログで書いてはいませんから
たとえば "短大卒業後、その延長線上の大学や職業に進みます" 的なことはあるのかもしれませんが
しかし、それでも —

人生は長く、その途上には「アイドル活動」以上に重要だったりシリアスだったりするイシューも
決断の機会もいくらでもあることでしょう。
でももしいま現在、成功不成功、実績/手応えの大小問わず
毎日が忙しくて充実してて心も体も目一杯それに集中していられて先のことなど考えていられない、
そんな境遇にあったとしたら
ねねころはともかくも、りさこは、京ちゃんはこの同じ選択をしただろうか?
この視点に立つにあたっては、ボクは「残念だ」「悲しい」「もったいない」「運営許せん!」等の
単純素朴で焦点の定まった、泣いて心を洗い流せるような
いわば「すっきりしたサヨナラ」に集束するような感傷を抱けないでいます。



過去エントリでボクは、論の端々で
ゾっとする/暗澹たる気持ちになるネガティヴ未来予想図をも描いています。
それらはアイドル界・芸能界に限られるものでもなく、
企業体の活動にならあまねく多かれ少なかれどこかで通底する
失敗や破綻や頓挫のあり得る形の描写です。
直近では「ひとつになって」「団結しなきゃ」等のメンバーの物言いが気になっていました。
エントリ80:乃木坂派みんなでポジティブポジティブ〜!
エントリ62:「ナナミさん、辞めないでよ(ミサト風に)」と言えるとしたら
エントリ55:ようつべの一角で「オラに元気を分けてくれ」を叫んだ乃木坂
そしてとりわけ
エントリ51:さよならアキモティクス、と言えるその日まで その1
ボクは「いくら何でもそこまでは行ってないよね?じゃあまだ大丈夫!のはず...」というように
逆説的な安心材料への試論として敢えてカサブタをいじるようなことを書いてきました。
今3人の卒業/活動辞退の報をガツンと喰らってみれば...
いくら名目上で華々しく上り調子に見えていようと
メンバー各人の八面六臂・神出鬼没の拡がりある各フィールドでの進撃に続く進撃が
タンタンタタンと続かない限り、
乃木坂46運営方針全体はむしろコスト・カットによるシヴィアな修羅の道となっていくのではないか
と、陰々滅々たる気分です。



ボクは、今エントリにいかなるポジティヴ・エンディングも付けられません。
前回予告していた「2期生で『乃木ここ』やっちゃいました!前後篇」のレヴューも
京ちゃんの活動辞退を知ってしまっては、少なくとも同じ気分で書くのは難しい。
3人に向けて哀惜の念を、さよならを、ありがとうを、がんばってを表すのは
ファンとしては当然のことではあるのでしょうが、
なぜかボクにはそれがものすごく難しいのです。
ねねころの深く低く太い唄声が活かされるのをもっと聴きたかった。
りさこの優しげで気弱げな顔に似合わぬ「毒舌」とやらを聞きたかった。
京ちゃんの、『乃木ここ』で観たばかりのファニーな部分をもっと観たかった。
まだまだ存分には何にも見せていない、見られていない、出せていない
ウケるもウケないも支持されるもされないもまだあったもんじゃないこの段階の卒業で
泣きようもないもの寂しさだけが心にぽっかりと根強く穴を空けるのです。



ボクは握手会には行かない人間ですが、行く方は
ひたすらの「ありがとう」と「楽しかった」と「がんばって」を、そして「謝らないで」を
どうぞよろしくお願いします。
われわれはもう十分に、感謝してもし切れないほどに、たくさんのものをもらっている筈ですから。



  


※1
卒業します | 乃木坂46 伊藤寧々 公式ブログ より 








  

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