無意識を言い訳にして — いくちゃんとななみんのもたらす理知とナンセンス論理の笑い

このトピックに関するエントリは、
随分前から温めていたもののあまりにも沢山の素材を採りあげる必要が生じて
結局まとまらなくなって一旦反故にする、というトライアルを繰り返してきたものです。
が、「いや?まとまらなきゃ『その2』『その3』と書き継いでいきゃいいじゃん」とばかりに
見切り発車でリリースしてみることにしました。
「その2」があるかどうかは発展次第なので敢えて「その1」とは冠しません。



乃木坂46のななみんこと橋本奈々未ちゃんの
「ドS」「サイコ」「人の不幸が好物」キャラは早くから有名かつ好評でしたが、
最近のメジャーな、噂にも名高き例では
『乃木坂って、どこ?』第110回:「7thシングルキャンペーン 恒例のヒット祈願!」において
欠席したいくちゃん(生田絵梨花)の足の小指骨折を嬉しそうに説明し
「脆いですよね(笑)」で締めるというファイン・プレイがありました。
その概要は、乃木坂46のファンでもなんでもない「一般」の人にも浅く広く知られ
おそらくは随所で「どういうことなの?何か知らんが面白そう!」という強いアトラクターとも
なってきたことでしょう。



一方で、あまりにも物を知らず人を知らず世間・世界を知らない人々の間になら
「なんて女だ!アイドルの風上にも置けないヤツだ!」みたいな
的外れなアンチ言説の材料としてそれを採択しようという人もいることでしょう。
ここでは、それがいかに的外れであるかを逆証明するためにも
まず一例として、とある「いくちゃんの逆襲」をご紹介してみましょう。



ナタリーの特別企画動画『乃木坂46の1stライブDVDを乃木坂メンバーと一緒に観よう!』第5部は
『乃木どこ』無慮5回〜10回分くらいの狂った論理の笑いがギッチギチに凝縮されて詰め込まれた
何百回もの視聴に堪える屈指の爆笑乃木坂プロダクトなのですが、
この動画内の「いくちゃんの逆襲」は、「脆いですよね」に勝るとも劣らない
シュールで不条理ナンセンスでタブー・ブレイキングでなおかつポップという
超一級ノギザカン・ジョークとなっています。
こういったものを見るにつけ、われわれは「やっぱ乃木坂だな!」という想いを新たにするのです。

乃木坂46『【第5部】乃木坂46の1stライブDVDを乃木坂メンバーと一緒に観よう!』
公式チャンネル nogizaka46SMEJ 改め 乃木坂46 Official YouTube Channel さんから



16分59秒地点から始まるシークエンス。
「シャキイズム」の終盤でひなちま(樋口日奈)とさゆにゃん(井上小百合)がステージ右手で転び、
助けに寄ろうか迷ったもののDVDでの編集を考え踏みとどまったが
ファンが心配する反応を見せていたので
"ごめんなさい、そしてありがとう"式の両手拝みジェスチャーで応えた、と説明するななみん。
うん、うん、あ、そうなの!?と興味深げに聞いていたいくちゃんは、話の終わりにカマします —
生田「わたしもしんどいのよ、つって(笑顔で)」
橋本「ちがうわっ!(ツッコミ調で、吹きつつ)」
このライヴの日、体調不良の中なんとか乗り切り、終演後救急病院に搬送された
というななみんの事前の話を受けての、
"助けに寄ろうと考えたが、自分も体がしんどくて動けないのでその場で拝みジェスチャーで済ませた"
というていになぞらえた
ヒネりにヒネった、サディスティックでナンセンスな
「んなワケないだろっ!」とツッコまざるを得ない
これ以上望めないほどの狂った状況論理を一言の下に作り上げる
いくちゃんの超絶技巧ジョークなわけです。
DVDと述懐上の過去の経験に対してとはいえ、イジワル極まりないそんなヒネったおちゃらかし —
でも、ななみんはそんなシュールネスとナンセンスネスが大好物なので
大喜びで浪速芸人ふうなツッコミを返してるのですね。



言わんとするところはもうお分かりでしょう。
いくちゃんとななみん(そしてもう一人の出演者ゆったん=斉藤優里)は
意地悪でサディスティックで邪悪でサイコパスで他人の不幸が大好きなわけではなく
感受性豊かで想像力/創造力に長け頭の回転がとてつもなく早いがゆえに
ある特定のひとつの事象/状況を
幾通りでものヴァリエーションで面白おかしく想像することができるのです。
頭の中で思いついたシュールでナンセンスでタブー・ブレイキングな笑える想像図を
端的に短く素早く誰にでも伝わるポップな言葉で提示していくことは
芸人さんたちが日々やってること、彼女たちが『乃木どこ』その他で日々触れていることなのです。
テレビ、ウェブ、ラジオ、楽屋、プライヴェート...
乃木坂ちゃんたちはお互いのおかしくて楽しくてかわいくて愛おしくて笑えるところ、
微笑ましいところを、日々発見し、イジり合い
その成果をメディアを通してわれわれに届けてくれているのです。
その際、もう過ぎ去って無害なものとして超克された個々のちっちゃな一時的な「不幸」は
笑えるエピソード・トークとして
歓びと笑いの種に昇華されて提供されるべきものとなっているのです。



やはり当初の予想どおり、1エピソードだけでおそろしく紙面を食ってしまいました。
今回は「無意識を言い訳にして」の部分にとっかかることさえできませんでしたが、
天使にして理想の少女像/プチ女神さまのように賞讃されているいくちゃんの
シャープな知性がブラックな笑いをも守備範囲に入れていることを語り得たところで
初戦は良しとしておきましょう。




『一緒に観よう!』と一緒に観ると楽しさ倍増3倍増の1stBDL








  

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