置き忘れられるロジック — エンジンなしの暴走機関車:かずみん
乃木坂46のかずみんこと高山一実ちゃんはお笑い/ヴァラエティ担当と称されることも多いのですが
そのもたらす笑いの質は
実はガツガツと前へ前へと出張っていくタイプのものではありません。
かずみんに限らず、「乃木坂46ならではの面白おかしさ」というのは
小学校低学年生までしか喜ばないような「うんこ、お尻」連呼タイプの面白おかしさではなく、
ひとひねりもふたひねりもある「狂った論理性」ゆえの面白おかしさという点で通底しています。
ここでは、ななみん(橋本奈々未)いくちゃん(生田絵梨花)と並ぶ乃木坂46の笑い発生源:
かずみんの面白さのエッセンスを過去の『乃木坂って、どこ?』を素材に語ってみましょう。
まだシングル・デビュー前、2011/10/30の『乃木坂って、どこ?』第5回:
「メンバー33名にアイドル適性テストを実施!!」において、
既にかずみんはその笑い喚起力の素:論理の欠如によるナンセンスネスを垣間見せています。
「飼ってみたい理想のペット」を想像で描くというお題に対してかずみんは
青い髪を持つ体長8mの巨大トイ・プードルをペット兼通勤のための乗り物として描きますが、
他メンバーやゲストの我が家を喜ばせ笑わせたのはむしろ
続いてのかずみんのおかしな受け答えでした。
我が家杉山氏「髪の毛の色はあの色でいいの?」
高山(右肘をこすりながら、照れ笑いしつつ)「青、という」
おそらくかずみんの頭・心の中では
"なになにでありながら、髪の毛の色は青、という、ね?この不思議さ、奇妙さ、おかしさ"
とでもいうような、言外の含みが何かしらあったのでしょうが、
テレビの前のわれわれ視聴者、他メンバー、MC席の5人の芸人さんには
いったい何が「という」なのか、さっぱり分からないわけですよ。
面白い/興味深い/独特な何かを本人は発言で十分主張できてるつもりなのに
その肝心の何かをすっ飛ばして/どこかに置き忘れて語っているために
話の勘所がまったく伝わってこない —
かずみんの面白おかしさの力学が早くも如実に表れた好ジャブでした。
かずみんの、肝心の何かをすっ飛ばして/どこかに置き忘れて語るがゆえのおかしみは
第40回「浴衣姿初披露/七月聖誕祭/夏を先取り 乃木坂怪談」
および第95回「真夏の怖い話大会」での
故郷:千葉の通称「おばけトンネル」略して「ばけトン」にまつわる怪談披露で
1年を隔てての「天丼」で最高のコンボを見せます。
第40回でのお話は、要約すれば
"ある夜、友達と連れ立って自分の家に帰ろうとする途上、おばけトンネルの近くの線路で
誰かを弔うように紅白の花に囲まれて置いてある草鞋を見た。
折しもトンネルから1人の女性が出てきて、怖いので目を合わせないようにして通過した。
自宅に着いた時、蒼褪めた顔の友達が言った — あの人、裸足だったよ、と "
という、相応に怖い、ちゃんと整合感のある怪談話なのです。
ところがわれらがかずみんは、要所要所で
・線路の前に何かある、が動物の死骸だろうと思った、猫とかよく死んでるから
・1足のゲタ、いやゾウリ、いや藁ゾウリ、ワラジ、1足だけいや2足、1セット
・目を伏せて >(バナナマン設楽氏のサジェストで)その女性を見ないようにして
・よかった、あの人はきっと散歩してたんだ、と思って
・(「裸足だったよ、って言うんです」でキメた後)「てことは」
小声で「おばけだったのかな、って」
張って繰り返して「てことは、てことは、おばけだったのかな、って」
バナナマン日村氏「ヘタクソぉ!」
と、恐怖要素をことごとく消してしまう言い違い、言葉足らず、余分情報、気負い過ぎ、で
せっかくの怖い話を台無しにしてしまうのでした。
しかもご当人は終始、"これはとっておきに怖い話だぞ〜"とばかりに
息も絶え絶えに時折生唾を飲むこみながら目一杯怪談モードで勢いこんで話しているのです。
スタジオは、怖い怖いと言いつつ怖がるのを楽しむという怪談披露回ムードをいつしか離れ
恐怖と失笑が交互に訪れるというナンセンス世界に突き落とされていました。
7月聖誕祭の余り尺埋め程度に、さゆりん(松村沙友理)かずみんによる怪談2話披露にとどまった
2012年のこの回に重ねて、
2013年8月の第95回では当時の選抜メンバー16名による30秒ずつのフルでの怖い話回。
後々まで語りぐさとなるいくちゃん(生田絵梨花)の武装ゴリラ夢バナ
クライヴ・バーカー的なモダン・ホラー風味あふれるゆったん(斉藤優里)の異次元ホテル話
整合感と古典性できっちり怖いななみん(橋本奈々未)の納骨堂の話
等々と、ネタ話、夢バナ、ガチ体験と各々がユニークなエピソードを繰り出す中、
やはり大トリはかずみんでした。
「これは わたしの友達が体験した話なんですけど
わたしの家の近くに『おばけトンネル』っていうトンネルがあって
そこの トンネルに 友達がドライヴで帰り寄ったらしいんですよ
そしたらそこ見たら何も でも怖い雰囲気はあって
それで 結局何にもなくて
で 家に帰ったらしいんですよ
で 家に帰ったら 何と!
か、鏡が割れてたんです!
(30秒で幕が落ちるのを待つようにキョロキョロして)終わり」
またしても勢いこんで緊迫した表情で話すかずみん。
ですが、バナナマンにも他メンバーにもわれわれ視聴者にも何にもピンとくるだけのものがない。
だからどうした、というだけのよく分からないお話です。
設楽氏「あれ、また出ましたね」
「前も出たあの 例の『おばけトンネル』ですか?」
高山「やっぱり やややっぱり 話尽きないんですよ」
設楽氏「だって『おばけ』付いたトンネルだもんね」
「おばけトンネル見に行って 家帰ったら鏡が」
高山「鏡が割れてたらしいんですよ(声を潜めるように)」
日村氏「だから何だよw 関係ねえじゃん、鏡が割れてるのと?」
高山「いや、ち、ち、たぶん その『おばけトンネル』で ば、『ばけトン』で」
「すっごい ほんとに 地元ではすごい有名なんですよ 『ばけトン』で」
「で その『ばけトン』で たぶん ふざけてたから たぶん 鏡が割れちゃった(っていう話です)」
設楽氏「なんで『ばけトン』でふざけると 鏡が割れんだろうね?」
高山「(食い気味に)おばけがいるからですよ!」
かずみんはまるで
"なぜ分かってくれないんですか。因果関係は明らか、じゃないですか。
ふざけている若者たちに怒った霊か何かが報復的な攻撃を仕掛けてきたんですよ!
それほどまでに怖いことが多発するおばけトンネル、だから有名なんですよ!"
とでもいわんばかり。
ですが、かずみん以外のみんなには
"トンネル、帰着した家、そこの鏡 — いったい何の関係が?" というのがむしろ当然の感想。
そしてこの空回り、ボタンの掛け違いの原因はCM明けのラストで解明されます。
設楽氏「高山が... お餅の鏡割りがどうしたって...」
高山「ちがいますちゃちゃちゃちゃいますちゃいます 鏡です鏡」
(両手で輪っかを作り携帯用手鏡をポケットから取り出す身振りとともに)
バナナマン両氏「え、こういうの(手鏡)なの?」
「え、家帰ったら なんか家の鏡が割れてたんじゃないの?」
「持ってたやつ?」
「それ言わないと!」
「家の鏡、なんか三面鏡みたいなもんが割れてるのかと思ったから」
高山「失敗しちゃった〜」
そう、かずみんは
"悪霊・邪霊のようなものが害意ある攻撃を仕掛けてきたが
鏡という呪物がその持ち主を、身代わりとして割れて守り邪気を跳ね返した"みたいな
古典的で整合感ある怖い話スタンダードに準じたせっかくのエピソードを
肝心かなめの細部「身につけていた手鏡」をスポーンと抜かして語っていたため
誰にもその論理的スジや怖さを納得してもらえないまま独りよがりに爆走していたわけです。
大オチが来るまでモヤモヤと、かつニヤニヤとできて
ツッコめばツッコむほどそのおかしな思考回路が解明されていく喜び —
かずみんのもたらす笑いもまた、実はそんなにもプログレッシヴなのです。
あっぷあっぷアタフタした受け答えや引き笑いだけでも
観ているだけで楽しい気分にさせてくれるかずみんですが、
論理の重要な一部をどこかに置き忘れたまま暴走する時、もっともその真価を発揮してくれます。
そこまでお膳立てが整うことこそ『乃木どこ』以外の場ではむしろ珍しいでしょうが、
多々あるテレビ出演その他で、かずみんの面白さが
「え?この程度がどうだっての?」と思われてしまうのはシャク、なのですよね。
これぞ我が乃木坂軍のまことの笑、まことの力なり! —
そんな高笑いができるほどに、もっともっと美味しいテレビ出演が増えてくれますように!
プライバシー ポリシー
そのもたらす笑いの質は
実はガツガツと前へ前へと出張っていくタイプのものではありません。
かずみんに限らず、「乃木坂46ならではの面白おかしさ」というのは
小学校低学年生までしか喜ばないような「うんこ、お尻」連呼タイプの面白おかしさではなく、
ひとひねりもふたひねりもある「狂った論理性」ゆえの面白おかしさという点で通底しています。
ここでは、ななみん(橋本奈々未)いくちゃん(生田絵梨花)と並ぶ乃木坂46の笑い発生源:
かずみんの面白さのエッセンスを過去の『乃木坂って、どこ?』を素材に語ってみましょう。
まだシングル・デビュー前、2011/10/30の『乃木坂って、どこ?』第5回:
「メンバー33名にアイドル適性テストを実施!!」において、
既にかずみんはその笑い喚起力の素:論理の欠如によるナンセンスネスを垣間見せています。
「飼ってみたい理想のペット」を想像で描くというお題に対してかずみんは
青い髪を持つ体長8mの巨大トイ・プードルをペット兼通勤のための乗り物として描きますが、
他メンバーやゲストの我が家を喜ばせ笑わせたのはむしろ
続いてのかずみんのおかしな受け答えでした。
我が家杉山氏「髪の毛の色はあの色でいいの?」
高山(右肘をこすりながら、照れ笑いしつつ)「青、という」
おそらくかずみんの頭・心の中では
"なになにでありながら、髪の毛の色は青、という、ね?この不思議さ、奇妙さ、おかしさ"
とでもいうような、言外の含みが何かしらあったのでしょうが、
テレビの前のわれわれ視聴者、他メンバー、MC席の5人の芸人さんには
いったい何が「という」なのか、さっぱり分からないわけですよ。
面白い/興味深い/独特な何かを本人は発言で十分主張できてるつもりなのに
その肝心の何かをすっ飛ばして/どこかに置き忘れて語っているために
話の勘所がまったく伝わってこない —
かずみんの面白おかしさの力学が早くも如実に表れた好ジャブでした。
かずみんの、肝心の何かをすっ飛ばして/どこかに置き忘れて語るがゆえのおかしみは
第40回「浴衣姿初披露/七月聖誕祭/夏を先取り 乃木坂怪談」
および第95回「真夏の怖い話大会」での
故郷:千葉の通称「おばけトンネル」略して「ばけトン」にまつわる怪談披露で
1年を隔てての「天丼」で最高のコンボを見せます。
第40回でのお話は、要約すれば
"ある夜、友達と連れ立って自分の家に帰ろうとする途上、おばけトンネルの近くの線路で
誰かを弔うように紅白の花に囲まれて置いてある草鞋を見た。
折しもトンネルから1人の女性が出てきて、怖いので目を合わせないようにして通過した。
自宅に着いた時、蒼褪めた顔の友達が言った — あの人、裸足だったよ、と "
という、相応に怖い、ちゃんと整合感のある怪談話なのです。
ところがわれらがかずみんは、要所要所で
・線路の前に何かある、が動物の死骸だろうと思った、猫とかよく死んでるから
・1足のゲタ、いやゾウリ、いや藁ゾウリ、ワラジ、1足だけいや2足、1セット
・目を伏せて >(バナナマン設楽氏のサジェストで)その女性を見ないようにして
・よかった、あの人はきっと散歩してたんだ、と思って
・(「裸足だったよ、って言うんです」でキメた後)「てことは」
小声で「おばけだったのかな、って」
張って繰り返して「てことは、てことは、おばけだったのかな、って」
バナナマン日村氏「ヘタクソぉ!」
と、恐怖要素をことごとく消してしまう言い違い、言葉足らず、余分情報、気負い過ぎ、で
せっかくの怖い話を台無しにしてしまうのでした。
しかもご当人は終始、"これはとっておきに怖い話だぞ〜"とばかりに
息も絶え絶えに時折生唾を飲むこみながら目一杯怪談モードで勢いこんで話しているのです。
スタジオは、怖い怖いと言いつつ怖がるのを楽しむという怪談披露回ムードをいつしか離れ
恐怖と失笑が交互に訪れるというナンセンス世界に突き落とされていました。
7月聖誕祭の余り尺埋め程度に、さゆりん(松村沙友理)かずみんによる怪談2話披露にとどまった
2012年のこの回に重ねて、
2013年8月の第95回では当時の選抜メンバー16名による30秒ずつのフルでの怖い話回。
後々まで語りぐさとなるいくちゃん(生田絵梨花)の武装ゴリラ夢バナ
クライヴ・バーカー的なモダン・ホラー風味あふれるゆったん(斉藤優里)の異次元ホテル話
整合感と古典性できっちり怖いななみん(橋本奈々未)の納骨堂の話
等々と、ネタ話、夢バナ、ガチ体験と各々がユニークなエピソードを繰り出す中、
やはり大トリはかずみんでした。
「これは わたしの友達が体験した話なんですけど
わたしの家の近くに『おばけトンネル』っていうトンネルがあって
そこの トンネルに 友達がドライヴで帰り寄ったらしいんですよ
そしたらそこ見たら何も でも怖い雰囲気はあって
それで 結局何にもなくて
で 家に帰ったらしいんですよ
で 家に帰ったら 何と!
か、鏡が割れてたんです!
(30秒で幕が落ちるのを待つようにキョロキョロして)終わり」
またしても勢いこんで緊迫した表情で話すかずみん。
ですが、バナナマンにも他メンバーにもわれわれ視聴者にも何にもピンとくるだけのものがない。
だからどうした、というだけのよく分からないお話です。
設楽氏「あれ、また出ましたね」
「前も出たあの 例の『おばけトンネル』ですか?」
高山「やっぱり やややっぱり 話尽きないんですよ」
設楽氏「だって『おばけ』付いたトンネルだもんね」
「おばけトンネル見に行って 家帰ったら鏡が」
高山「鏡が割れてたらしいんですよ(声を潜めるように)」
日村氏「だから何だよw 関係ねえじゃん、鏡が割れてるのと?」
高山「いや、ち、ち、たぶん その『おばけトンネル』で ば、『ばけトン』で」
「すっごい ほんとに 地元ではすごい有名なんですよ 『ばけトン』で」
「で その『ばけトン』で たぶん ふざけてたから たぶん 鏡が割れちゃった(っていう話です)」
設楽氏「なんで『ばけトン』でふざけると 鏡が割れんだろうね?」
高山「(食い気味に)おばけがいるからですよ!」
かずみんはまるで
"なぜ分かってくれないんですか。因果関係は明らか、じゃないですか。
ふざけている若者たちに怒った霊か何かが報復的な攻撃を仕掛けてきたんですよ!
それほどまでに怖いことが多発するおばけトンネル、だから有名なんですよ!"
とでもいわんばかり。
ですが、かずみん以外のみんなには
"トンネル、帰着した家、そこの鏡 — いったい何の関係が?" というのがむしろ当然の感想。
そしてこの空回り、ボタンの掛け違いの原因はCM明けのラストで解明されます。
設楽氏「高山が... お餅の鏡割りがどうしたって...」
高山「ちがいますちゃちゃちゃちゃいますちゃいます 鏡です鏡」
(両手で輪っかを作り携帯用手鏡をポケットから取り出す身振りとともに)
バナナマン両氏「え、こういうの(手鏡)なの?」
「え、家帰ったら なんか家の鏡が割れてたんじゃないの?」
「持ってたやつ?」
「それ言わないと!」
「家の鏡、なんか三面鏡みたいなもんが割れてるのかと思ったから」
高山「失敗しちゃった〜」
そう、かずみんは
"悪霊・邪霊のようなものが害意ある攻撃を仕掛けてきたが
鏡という呪物がその持ち主を、身代わりとして割れて守り邪気を跳ね返した"みたいな
古典的で整合感ある怖い話スタンダードに準じたせっかくのエピソードを
肝心かなめの細部「身につけていた手鏡」をスポーンと抜かして語っていたため
誰にもその論理的スジや怖さを納得してもらえないまま独りよがりに爆走していたわけです。
大オチが来るまでモヤモヤと、かつニヤニヤとできて
ツッコめばツッコむほどそのおかしな思考回路が解明されていく喜び —
かずみんのもたらす笑いもまた、実はそんなにもプログレッシヴなのです。
あっぷあっぷアタフタした受け答えや引き笑いだけでも
観ているだけで楽しい気分にさせてくれるかずみんですが、
論理の重要な一部をどこかに置き忘れたまま暴走する時、もっともその真価を発揮してくれます。
そこまでお膳立てが整うことこそ『乃木どこ』以外の場ではむしろ珍しいでしょうが、
多々あるテレビ出演その他で、かずみんの面白さが
「え?この程度がどうだっての?」と思われてしまうのはシャク、なのですよね。
これぞ我が乃木坂軍のまことの笑、まことの力なり! —
そんな高笑いができるほどに、もっともっと美味しいテレビ出演が増えてくれますように!
