強く儚いななみん

「男子」という生き物は強い女子・女性が嫌いです。
強い女の子という存在は時に、逆説的な鏡像として
強くあるべき「男」である自分が持つ内なる弱さを突きつけてくる存在になることがあるからです。



乃木坂46のななみんこと橋本奈々未ちゃんは
そういう面ではともすれば多くの「男子」に嫌われそうな、
嫌われこそしないまでも好かれる第一候補ではない、という要素の強いメンバーでしょう。
既に好きだ夢中だという同志には言わずもがなのことながら、
今エントリでは、橋本奈々未(以下、ななみん)を嫌っている人 —
理由もなく嫌っている人から間違った解釈で嫌っている人まで含めて
「もっとよく見ろよ、そして心配するのを止めて愛せよ」という観点から
ななみんの強さとか弱さ、それゆえの愛らしさを語る試論を展開してみましょう。



ななみんといえば「体が弱い」。
それがいつ始まったのかは与り知れるところではありませんが
「こどもの頃からそうだった」と推測するのは妥当なところでしょう。
『乃木坂って、どこ?』第71回:「2月生まれメンバーを祝う 乃木坂46聖誕祭」で見えるように
6、7才から10、11才ごろのななみんは、いかにも
体が弱くインドア指向で読書が大好き、の典型例の女の子に見えます。



小中学生時代にやっていたバスケを高校ではやらずにマネージャーに転じたのも
体の弱さが高校レヴェルのバスケには耐えられそうになく、と考えると腑に落ちることです。
健康体・タフネス・普通の日常への、憧れ・欲求・鍛錬の気持ちが
インドア少女をバスケに向かわせ、それでもの上限限界がバスケ継続に歯止めをかけた ー
そう考えると自然な流れが浮かんできます。
そしておそらくその流れは、ななみんにまつわる強さとか弱さの不思議なアンバランスに
根本で共通するものではないかと思えるのです。



タブー・ブレイキングでブラックな笑いで広く知られるななみんですが、
実は愛と優しさ、それも理解の深さゆえの控えめでさらりとした優しさや気さくさでも
知られています。
端々で垣間見えるその姿は、まるで
愛を与えることには寛容で出し惜しみ知らずであれ、でも愛を求めて報われ不足で泣くのは嫌い、
と自分を厳しく律している人の姿のようにも見えます。



そこに過剰なまでの悲劇のヒロイン性を見出だそうとするのはボク自身自戒したいところですが、
『乃木坂って、どこ?』第71回の聖誕祭の回顧VTRの序盤の動画、及び
テロップ「4歳下の弟に両親をとられ 自分も構って欲しいと猛アピール」
    「あまり構ってもらえず 寂しい思いをした」
当人コメント「ずっと弟の悪口を言ってた(吹きつつ)」
等には
「愛すること」の総量が50:50の「愛されること」の総量で報われることはないのだな、
「愛」という尊く美しかるべき感情・行為も、石油や時間のように有限なリソースであって
人は誰しも自分の欲するだけの十分な愛を受け取って報われることなどないのだな、
という、平均的には思春期から大人の段階で学ぶことになる哀しくも厳然たる人間社会の真実を
幼稚園時から小学校低学年時にはすでにして知ってしまっていた少女奈々未の
強さに魅かれ強さを志さずにはいられなかった精神的軌跡が垣間見えます。
「お小遣いやお年玉で自伝を買い 常に読みふけっていた」
「そんなことから テストでは殆ど100点 悪くても90点という成績で」
「小学校4年の時には全国テストで1位を取るほどの秀才っぷり」 —
それは輝かしい早熟の天才っぷりというよりはむしろ
「強さ」のいち要素として知性や知力に道を見出だした少女、
さらには、人間の生き方・在り方のロール・モデルを本の世界に探るうちに
いつの間にか図らずも「頭のいい女の子」になってしまっていた少女、の姿に見えます。
橋本奈々未という人物の姿は
元天才少女がどういうわけか美大に進み、さらにどういうわけかアイドルに進んだ姿
というよりは
何かこの世ならぬ強さや美しさや正しさを求め続けた少女が、直感に導かれてアイドルにまで進み、
しかもその漂泊の思い未だ止まず、どこか遠くの心躍るゴールを探し求め続けている姿
といったほうが適切であると思うのです。



ななみんの「強さ」は、か弱き者が不退転の覚悟によって身につけた、精神の、意志ゆえの強さです。
何かが — たとえばとある「お仕事」がななみんの前に立ちはだかり力試しを挑んでくる時、
ななみんはあらん限りのパワーやスキルを総動員してそれに応え「勝利」を目指しますが
時に力及ばず敗北を喫し苦渋を味わい、それでも次こそは、と秘かに闘志を燃やします。
そうしなければ、常に後退を余儀なくされ狭い世界に押しこめられやりたいことをやれず終いの
か弱く儚い、かわいらしくもかわいそうな女の子に戻ってしまうことを、
この世界が残酷で薄情なもので人ひとりのことなどどうなろうと知ったこっちゃないことを、
誰よりもシヴィアに知ってしまっているからでしょう。



そしてその精神の、意志ゆえの強さは「ジャイアニズム」のような方向にはけっして向かいません。
彼女が何かに「敵対」する姿勢を見せることがあるとしたら
それは必ず「強きもの」、そしてその強さをアンフェアに、ネガティヴに使うものに向けられます。
ジェネラル・クールの凱旋 — 橋本奈々未、「バレッタ」で覚醒す でも書きましたが
7thシングル『バレッタ』時、彼女の矛先は、アンフェアで強きもの:「運営」に向けられ
同じく犠牲者である弱きもの:堀未央奈に向けられてはいませんでした。 ※1
いわゆる「USJ騒動」の際も、その矛先は「無名の弱きもの」ではなく
匿名の許に隠れ人の悪意を後ろ盾にした、アンフェアで醜く、暴力性への嗜好に満ちた
「勘違いした強さを志し、勘違いした強さを誇りたがるもの」に向けられていたのであり、
同時に、まったく筋違いな迷惑を被った一般の無名の電車乗客のプライヴァシーの保護に
配慮するためのものでした。    ※2
ここでくだくだしくすべてを語ることは敢えてしませんが、
生駒ちゃん(生駒里奈)&SKE48松井玲奈ちゃんの「兼任」発表時の声明ブログ、
2014/03/11のおそらく「敢えて」のブログ、   ※3
いずれにも「ジャイアニズム」的なものにのみ静かにしかしきっぱりと対峙する、
か弱くも賢く潔い、その賢さと潔さだけを武器とする「強さ」が見られます。  
弱きを助け、強きを挫く — いまや日本では損するだけの笑い者になってしまうようなヒーロー像は
「小学校4年生の時に読んだガリレオ・ガリレイの伝記が
 私の今の人格形成に多大な影響を与えています」   ※4
という橋本奈々未の心中にあっては、未だに何らの間違いもない正義の形であり、
たかがアイドル、たかが芸能人の地位ごときと引き換えに押し殺せるものではないのでしょう。 



「強く儚い者たち」 — Coccoの2ndシングルのタイトルのこのフレーズを目にした時のボクは
「何だよ、そのヒネクった、大時代で侍ちっくなコンセプトは?」と思ったものですが、
奈々未先生の美しくも強く、強くも儚く、儚くも潔い姿を見るにつけ
そういうこともあるのだな、と人の世界の遼遠さに想いを馳せさせられます。
少しずつ少しずつ、でも着実に増えている橋本奈々未の女性ファン人気は
確実にその強さと儚さゆえの美しさを感じ取った上でのものであろうし、
ゆえに「寄らば大樹の陰」「長い物には巻かれろ」式のギャースカ人気とは一線を画す
確かで末永いものとなることでしょう。
そして、あしゅこと齋藤飛鳥 — 橋本奈々未ファンの極北に位置するこの無双のななみLover、
いい加減彼女について語る時も近づいてきたようです。






※1
(´_ゝ`) こんにちは | 乃木坂46 橋本奈々未 公式ブログ

※2
(´_ゝ`) 私まだ人生で一度もUSJ 行ったことないよ!!泣 | 乃木坂46 橋本奈々未 公式ブログ

※3
(´_ゝ`) ねこかいたい | 乃木坂46 橋本奈々未 公式ブログ
3.11 | 乃木坂46 橋本奈々未 公式ブログ

※4 
一例までに
『乃木坂って、どこ?』第23回「密着ドキュメント 乃木坂46 154日間の軌跡」回顧VTR内発言
また 
ナタリー - [Power Push] 乃木坂46・橋本奈々未インタビュー&フォトギャラリー (2/13)
「小学4年生の頃にちょうど伝記にハマッていて、教室の文庫棚にあった伝記という伝記を全部読みあさりました。その中でも一番印象に残っていたのがガリレオ・ガリレイの伝記で、小4なりに『自分の意思を貫き通す男の人ってすごいな。自分もそういう人になりたいな』って思った記憶があります。」








  

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