冬月流に「勝ったな」、と「気づいたら片想い」MVを観た乃木坂ファンは誰しも呟く

覇王がみずから軍を率いて長城を越えた
この北伐の成果はそれだけですでに達せられている(賈詡)

すでにしておいらの在る処が天下だ!(劉備)

漫画『蒼天航路』の愛読者であるボクは、
このブログでしょっちゅうイミフな引用/改変を、乃木坂ちゃんを賞讃するために使っています。
アイドル/アイドル・グループが天下に出ていく様、上り坂を上っていく様を描写するのに
『蒼天』のシーン、エピソード、決め台詞などがドンピシャにハマることが多いゆえです。
そして、今回の8thシングルの先行公開を目にしたボクの脳裏に去来したのは
上記の2セリフでした。



巨大なマニー・メイキング・マシーンがついに堪え性をなくして遠慮会釈のない牙を剥き
逆風が吹き荒れ逆波で航路もままならず、ファンさえもが迷走を始めたと思われたさなか、
一撃必殺・一発逆転・起死回生のリリースが乃木坂46に見られました —
2014/3/7(金)に、8thシングル表題曲「気づいたら片想い」のMVが公開されたのです。

乃木坂46 『気づいたら片想い』
公式チャンネル nogizaka46SMEJ さんから

ごく一部の、基本的には「ファン」相手の、そのまたごく一部への先行発表 —
3/2の握手会、3/3のNACK5『おに魂』 — では見えて来べくもないその反響には
素晴らしいものがありました。
「一般ファン」及び「ファンでもない一般の人々」のTwitterでの反応は上々から絶賛 —
狭い狭〜い「乃木坂46ファン」「乃木ヲタ」の世界から
大々的にはみ出すチャンスの可能性を感じさせたのです。



「泣かす」「泣ける」「泣いた」 —
ボク自身、このMVを観るたびに、どころか観ようとするたびに先に泣けてくるくらいなので
そうした(基本的には)ファンの言には何の異論もないところですが、
同時にシヴィアで冷徹な視点から言えば
「ファンでも何でもない一般の人たち」が同じように皆「泣いて」くれるとは思っていません。
たいていの人は(そしてもしファンでなかったらこのボク自身も)
「何だ、この昔ながらの古臭い、新味も鋭さもないお涙頂戴モノは?」と
十中八九思うでしょう — そして、それで構わないのです!



この場合の「十中八九」は
50万人中の40〜45万、200万人中の160万〜180万を指すと言っても過言ではない。
一般の人々は何かが騒がしければそれをチェックし、気に入れば採り気に入らねば捨てるだけです。
そして「一般」である限りにおいては
「絶対採ってやるものか」と最初から決意している人などいません。
ということは?
きっかけがどうあれ、50万人中5〜10万、200万人中20万〜40万の人が
乃木坂46を新たに、もしくは改めて、観て気に入るかもしれない、ということなのです。



われわれファンにも与り知れない領域で
乃木坂の天下を精緻に真剣に考えている軍師にして勇将である生駒ちゃん(生駒里奈)は
2013年11月、7th『バレッタ』発表時に、すでにして「拡がり」への焦燥感を公言していました。
 ナタリー「2期生も加わり、武道館や代々木体育館といった大会場でのライブも実現。
       さて、乃木坂46をここからどうしていきましょう?」
 生駒「うーん、ここからなんだよなあ。
    与えられた場所で常にプラスアルファのものを出していって、
    それを観た人に好きになってもらうのが大きな課題だと思う。
    そうしないとどんどん広がっていかないし。」
   「あとは乃木坂のことを好きな人たちにもっと好きになってもらうように努力して、
    その人たちに乃木坂のことを広めてもらったり。
    『乃木坂46っていうグループは本当にすごいんだよ、だからあなたにも聴いてほしい』
    って言ってくれる人を、どんどん増やしていきたいです。」  ※1
バック・グラウンドでどんな注力と奮闘が為されているとしても
われわれファンから見る「運営」は、「バレッタ」MVに代表されるように
「それを観た人に好きになってもらう」
「乃木坂のことを好きな人たちにもっと好きになってもらう」
「その人たちに乃木坂のことを広めてもらったり」
「『乃木坂46っていうグループは本当にすごいんだよ、だからあなたにも聴いてほしい』
 って言ってくれる人を、どんどん増やして」
というような状況を可能たらしめることをやってきたとはとてもとても言い難い。
むしろ、オススメしたファンが恥ずかしくなる、もしくは恥ずかしくてファンがオススメできない、
そんなことばっかりをなぜか頑張ってやっているように見えていたのです。



ところが今回は一転。乾坤一擲の、かつどストレートの真っ向勝負。
なぜだか何かにいまさら思い至ったのか、
秋元康氏はいつもの冷笑メタ視点悪戯含み笑いの話者不明の歌詞スタイルを捨てるわ、
MVは直球泣かせ青春ドラマでメンバーと関係性の美麗さをフィクショナルながら全面に押し出すわ、で
コッテコテではあれ、というよりむしろコッテコテであるからこその
フル・スロットル乃木坂46のポテンシャルが存分に発揮されているのです。
そりゃ、当のわれわれファンだってもちろん思っていますよ?
「限られた命、みたいなこと安直に無神経にドラマにすんなよ」
「なーちゃん(西野七瀬)が死んじゃうなんて縁起でもないストーリーやめろよ!」
「おいおい、これでなーちゃん卒業フラグとかだったら絶対に許さない、絶対にだ」と。
ところが、乃木坂46の個々のメンバー、個々の関係性、乃木坂46という「場」が
常に儚さやヴァルネラビリティと背中合わせの清新な美しさを提示しているため
われわれは乃木坂の存在自体とこのドラマを重ね合わせて
我知らずほだされて泣いてしまう、泣かずにはいられなくなるのです。
それは必ずや、初見の10%20%の人の興味をも惹き
「こんなグループいたのか、知らなかった、気にしてなかった」とその心を動かすことでしょう。



これは、狭い乃木ヲタ層、狭いドルヲタ層、狭い思春期モラトリアム男子層に
敢えて狙いを最初っから絞ってきてはいない、乃木坂の新たなる咆哮ですよ。
フツーの小中学生、イケてる女子高生・女子大生・OLから40、50代の主婦に至るまで
アイドル・ポップス、Jポップ、もしくは歌謡曲を聴き買うような人々すべてに向けても開かれた
起死回生の1曲になるでしょう。
知って、観て、聴いて、それでも好きじゃないというのならそれはそれで仕方ない。
でも、知りもせず、観てもいず、聴いてもいず、でスルーされていては未来がない。
心配される生駒ちゃんの兼任騒ぎにまつわる不安を吹っ飛ばすような初動の快勝 —
このMVの成果はそれだけですでに達せられていると言えるでしょう。



   


※1
ナタリー - [Power Push] 乃木坂46「バレッタ」特集 - 生駒・堀センター対談 (5/10) より








  

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