ジェネラル・クールの凱旋 — 橋本奈々未、「バレッタ」で覚醒す

乃木坂46のクール将軍:橋本奈々未先生は、乃木坂メンバーには珍しくないことですが
歌もダンスも苦手ということを陰に陽に公言していました。
ナナミストであるわれわれにしてみれば、さもありなん、かつ問題ない、で済む話ですが
レッスンの場や公開パフォーマンスの場では大問題 —
殊に「この歌番組次第で10万人規模の新規ファンが付くかも」みたいな場では
歌やダンスで一見さんを魅了するのはアイドル・グループとして必須、死活のスキルでしょう。
奈々未先生に限らず、乃木坂メンバー、さらには乃木坂46全体が
その点ではまだまだ一歩も5歩も10歩も満足には及んでない、と言わざるを得ません。
記憶に新しく印象的な反面例をひとつ挙げれば
紅白のNMB48が「カモネギックス」一発で初見のはるかぜちゃんを虜にした例が浮かびます。



さて、いったん話は変わって7thシングル「バレッタ」、
「炎上」的とも言える局所的プチ話題となったのはもちろん、
いきなりの唐突な2期生センター:堀未央奈ちゃんの起用、
そしてそれ以上に鮮烈だった奈々未先生による "運営批判" でした。
(´_ゝ`) こんにちは | 乃木坂46 橋本奈々未 公式ブログ
いつものすっとぼけた顔文字によるなんてことないタイトル、
まなったん(秋元真夏)の釣りワザに刺激されたという向いてない釣りワザに続いて
襟を正すような空行の後、「ここから先は正直な思いを書きます」と告白が始まります。
「発表された瞬間は、正直受け入れられませんでした。」
「未央奈をではなく、大人の判断を。」
「収録が終わった後、みんなで泣きました」
「まだ握手会の日に控え室でしか顔を合わさない、何の経験もない
 2期生がセンター」
「こんなこと言える立場じゃないのは分かってる、けど、
 何を基準で抜擢されたのか全く私たちには不明確で、悔しかった」
アンチ勢力のみなさんにはとてつもないご馳走に見えたであろうこの文言ですが、
重要なのは「未央奈をではなく、大人の判断を」「何を基準で抜擢されたのか全く私たちには不明確」
の部分こそであり、
まともな人間なら100人中100人がもっともな言い分と同意・納得できる正当な批判であり、
逆にそれを批判できるとしたら、自ら奴隷になることを良しとするおかしな人々のみでしょう。



そして漢の中の漢、乃木坂のジェネラル・クール橋本奈々未は
"それはそれ、これはこれ"とばかりに素早くネガ感情を断ち切り、「次」への意欲を表明します。
「でも決めたんです。」
「7枚目、未央奈を支えるし、一緒に頑張ります。」
「モヤモヤした思いを抱いている時間は
 自分にとっても、未央奈にとっても、乃木坂にとっても
 何のプラスにもなりません。」



果たせるかな。有言実行。
奈々未先生は「バレッタ」MV、及び歌番組において
センター右手、3フロント右手(向かって)で
「主役」を食い楽曲「バレッタ」を象徴するようなパフォーマンスを見せ、観る者を魅了します。
それはけっして未央奈センターを邪魔し崩すようなものではなく、
未央奈に、またまいやん(白石麻衣)生駒ちゃん(生駒里奈)まっちゅん(松村沙友理)にも
できない「『バレッタ』解釈」を独自に打ち出しやり通す、
歌手やアイドルのそれというよりはバレリーナや新体操選手や女優にこそ相応しい
「表現」「舞」「パフォーマンス」の面での高クオリティ芸能です。
いつものことながらまたしてもおかしな — 誰がどう「話者」に感情移入すればいいのか不明な
「男子目線」の歌詞の解釈を、端っからせせら笑い打ち捨てるかのように、
悪評高きMVのあのニューオーリンズ/新宿風味のムードと
ノスタルジックなのになぜか不穏で淫靡なカーディガンズ風味のサウンドに合わせてか、
挑発的でアンニュイで艶っぽい「舞」と表情でニコリともせず
目線の動き、揺れる前髪、顔に添える指先、誰よりも大きく速いストライドで
イントロ30秒で強引なまでに「バレッタ」の「カラー」を決定づけているのです。
それこそが、ダンスとも芸能界ともアイドルとも無縁の人生を送ってきた奈々未先生らしい、
奈々未先生だからこそ見出だせた、文系流の「演舞」の美しさなのでした。

乃木坂46 『バレッタ』
(オフィシャル・チャンネル nogizaka46SMEJさんから)



第104回『乃木坂って、どこ?』での選抜発表時、堀ちゃんセンターが発表される前の時点で、
席次4番/センター右手/序列2番手に選ばれた奈々未先生は
特に感謝・感激・感涙を見せることもなく、むしろ淡々とかつ深刻な表情で
「ちゃんと自分を持ってブレないでちゃんと自分なりにがんばっていけば
 個人的にも周りのみんなにも良い影響が出るかなってことを学んだので
 自分が正しいと思った方向でがんばっていければいいなと思います」
とコメントしていました。
何があってもブレない人、そのブレなさゆえにメンバー間でも独特な信望を集める人である
橋本奈々未は、単に「悔しさ」というよりはアンフェアさへの怒りを怖じることなく表明し、
しかもそれをすぐさま振り捨て、所信どおりにブレることなく自分なりにがんばることで
「バレッタ」でのハイ・パフォーマンスをものにしたのでした。
このジェネラル・クールの凱旋は
もしかしたら8thシングル・センターへと結実するかもしれませんが、
おそらく奈々未先生の内にあっては、そういう栄誉フォーマットももう過去の、
もはやどうでもいい「栄光」「トップ」の形にすぎないのかもしれません。
そしてそれは、乃木坂46というグループにとってもそのファンにとってもむしろ到達すべき境地 —
"センターが、福神が、とかどうでもいい。ひとりひとりがメディア上の一つ一つの場で何をやり、
何を乃木坂に持ち帰れるか" という、次にスタート地点とすべき境地なのでしょう。
それぞれに違っていて、その違いにこそ魅力の素がある乃木坂メンバーにとっては
「競争」「争奪戦」というのは端から意義の薄いものであるのですから。




 
参考資料として 'Emmerdale' から "Sick & Tired" 'Life' から "Carnival"








  

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