『のぎ天』の終わりは強の始まり、か?
去る’19年6月7日、ちょっとした衝撃が一部の乃木坂ファンの間に走りました。
いや、もしかしたら、「結構な衝撃が乃木坂ファンの間に広く」と言うべきなのやも知れませんが
ボクは敢えて、イジワルにかつ遠回りの愛情をこめて「ちょっとした」「一部の」を採っておきます。
楽天TV『のぎ天2』のツイッター・アカウント @nogiten2から
『のぎ天2』の終了、および『のぎ天』を含めた全話の配信終了が告げられたのでした。
https://twitter.com/nogiten2/status/1136876464937136128
190607、15:04のツイート
“【大切なお知らせ】 いつも「のぎ天2」をご視聴頂き有難うございます。 当番組は、番組開始から3年となります2019年6月分をもって最終回を迎えることとなりました。 長い間、ご視聴頂いた皆さまには心より感謝申し上げます。 配信終了の詳細はこちらをご覧ください。(リンクが続く)”
なぜボクがそれほど衝撃を受けていないのか、あまつさえそれが「強の始まり」とはどういうことか、
ここでは、主に「運営」への批判と乃木坂のさらなる未来の強への期待をこめて
暴言・妄言まじりになることをも恐れず、つらつらと展望を語っておきましょう。
元々は、乃木坂46公式サイトで無料公開されていた『乃木坂って、ここ!』の後継として
まだ弱体であった乃木坂運営が楽天という一流とは言い難いウェブ企業と組んでの
ウィン - ウィンのマネタイズのもくろみからスタートした『のぎ天』。
でしたが、2014年7月の開始時、そして同10月からの金曜先行有料配信(明けて火曜より無料)時にも
「誰でも、無料で、後からでも」タイプのコンテンツであり
それは間違いなく、その時々の「アンダー」であったメンバーの素の魅力を
新規ファンにも知らしめ拡がりをもたらすもっともで効果的なコンテンツ戦略でした。
が、約1年のインターヴァルを置いて2016年6月にスタートした『2』は最初から有料配信オンリー。
既に十分な大物化を果たしていた「乃木坂さん」獲得に多くの企業が乗り出していた時期であり
なんなら乃木坂運営は強気に、裾野の拡大化への展望も含めて
無料にこだわった詰め交渉に出てもよかったはずの流れです。
だが楽天側は、そしておそらく運営も、日銭稼ぎ・囲い込み的なPPV方式に執着した。
その結果が結局は
視聴者層「楽天TVなんてとこに登録したりしてまで都度購入/月額登録なんかしないかなー」
楽天「都度も月額も大して上がらないなー。乃木坂さんとこもその程度かー。経費もったいねー」
運営「ギャラも成果バックも大したことないなー。メンバーもスケジも無駄遣いかなー」
なんてところに落ち着いていった、って感じなのではないですかね。
企業活動なのだからカネは大事ですが
楽天ではグーグルともアマゾンとも、一般の優良大企業とも組めないですからね。
そして悪評芬々たるウェブ企業:楽天を「一般消費者」がどれだけ信用してくれるものか?
「一般」の多くのヲタならぬファンが、観てもいないコンテンツに一か八かカネを投入してくれるか?
ヲタならぬファンの、さらには新規ファンの果たして何十%、十何%、何%が観てくれているのか?
ー 拡がりには繋がらず、したがってストックは火を吹かず、フローもまた右肩下がり...
あくまでも悪魔でも紳士的に企業体らしく、ではありましょうが
乃木坂運営と楽天が遂に袂を別った、と見るのはあながち間違いではないでしょう。
そしてボクは、これをむしろ福音・朗報と見ますね。
さらなる強の始まりに向けて、またの一手に踏み出す好機、と。
「乃木坂さんとこのアンダー・コンテンツ枠、空きが出たってよ!?」と
沸き立つ一流/大型/老舗メディア企業がどれほど水面下で動き出すことか。
看板に物を言わすNHK、おずおずとCSというエクスキューズ付きで手を出しているTBSを横目に
損得勘定アンビヴァレンスに揺れつつ焦れているはずのフジ、テレ朝は
いつまで日テレ・テレ東の後塵を拝したままでいるつもりなのか?
またそうした地上波TV陣のみならず
SHOWROOMの先行独占許すまじと密かに機を窺っているであろうLineLive、AbemaTV等、
「消費者からは0円、お代はスポンサー企業やフリーミアム・オプションから」型の
つわものメディア/コンテンツ/プラットフォーム企業が
三顧の礼を尽くしてでも乃木坂さんをお迎えしたいと熱気ムンムンの今般。
リソースがっちり、編集がっちり、コンテンツ力がっちりの週1アンダーわちゃわちゃ番組を
たとえば金・土の23、24、25時台に言い訳抜き夾雑物抜きの真っ向勝負で放っていったら
どれほどの「初見」が、「新参」が、「一般」が食いつき
どれほどの優良/有名/一流企業がスポンサーとして是非にもとカネを出したがってくるか ー
乃木坂運営が今、ライヴァルにしてお手本とみなすべきは
『賭ケグルイ』や『きのう何食べた?』や白石聖ちゃんや髙橋ひかるちゃんのはず、なのです。
熱い
これからの戦いは長く熱いものとなろう
今の俺の心境を一言で語るなら
まだ勝利の味を知らぬ騎都尉・曹操
まさに初陣の心地だ (曹操)
—『蒼天航路』その二百十五 より
夏合宿回で “最低限の布で来た” と言うひなちま(樋口日奈)に
常なるメタ視点の美味しさセンサーで鋭く食いつき
ひめたん(中元日芽香)諸共にイジりをカマし「ひなちま混ぜ混ぜ」を引き出すかなりん(中田花奈)。
「あしゅさんとは男と女じゃなくってぇ... ね〜っ!」とヤバ武を発揮し
その後のあっしゅんきんちゃん(齋藤飛鳥&北野日奈子)ラヴラヴ絵図を予告し
コワいコワい、とあみたむ(能條愛未)に引かれていたきいちゃん。
1期生でおそらくは初めて公のコンテンツで、伊藤かりんちゃんを「かりんちゃん」と
ちゃん付けで呼ぶのを見せていたまりっか(伊藤万理華)。
かりんちゃんと琴子(佐々木琴子)のロシアン・ティーおもてなし喜劇に痙攣発作の笑いが止まらず
ティー・カップをカチカチと鳴らし続けていたいおり(相楽伊織)...
個人的には、何十も、細かく数え上げればなんなら百何十もの、何百もの名シークエンスを思い出せる
『のぎ天』および『のぎ天2』を愛していたことでは人後に落ちないと自負するボクですが、
じゃあ、2019年や2018年や2017年に乃木坂に「入ってきた」新規ファンに
登録してカネを払ってこれを観ろ、と『2』の過去回や現在をゴリ推ししたいかといえば疑問です。
良くも悪くも、 ”三番目の風” を運営が華々しく高らかにリソース豊かに推しまくっていた約3年の間に
「暗い色の塊」や「昔を回顧したくなる気持ち」は、三々五々にない混ぜとなって
1期生アンチ、2期生アンチ、3期生アンチ、4期生アンチ、乃木坂全体アンチを地下に産み
多くの「自称ファン」が同時に強烈で熱心なアンチでもあるという奇怪な状況が出来しています。
ボクは、「マイナス方向の予言が成就する」ようなことを喜ぶキモヲタ・アンチではないのですが、
満開の桜を見上げて鍋に投げ込まれたひよこ豆の気持ちを想ったことはあったか?
で幻視したような、「表層人気ゆえ崩れるのも早い脆弱な3期推し態勢」の根本原因として
素が、人間性が、繕いようのない個の魅力が自然と現れるごちゃ混ぜフリー・スタイルのコンテンツが
不在だったことが挙げられると思っています。
本当ならそれこそが、『のぎ天2』が率先してまかなうべき領域であったはずなのに。
今、今こそ、乃木坂運営が死力を尽くして乗り出し世に問うべきは
どこかのチンピラ言いなり出版社や意識高い(笑)系のインチキ言説屋に作ってもらった
都合よくまとめられた「ストーリー」ではなく
週ごと月ごとに眼前で生まれ、変わりゆく乃木坂ちゃんたちの生身のドキュメンタリー/ストーリー
であるはずなのです。
乃木坂運営視点からなら何の得にもならなかろうに
あやてぃー(吉田綾乃クリスティー)と麗乃(中村麗乃)は琴子さん(佐々木琴子)の
どこをどういうふうに愛しているのか!
古参ヲタの葉月(向井葉月)の意味ありげでなさそげでやっぱりありそげなブログのタイトルには
どんな含みが込められているのか!
“女優さんの事務所” での限界を感じて乃木坂入りしたはずのやまっきー(山下美月)の
6/8深夜の『工事中』の独白ドキュメンタリー動画には如何なる意味があったのか!
順風満帆のはずなのに「自分が面倒くさくて仕方がない ※1」と声にならない悲鳴を上げる
みなみん(梅澤美波)は何をそんなに悩んでいるのか!
アニヲタっぷりと男装麗人っぷりをブログや『りりマニ』で押し出すリリアサン(伊藤理々杏)は
何を思いどこを目指すのか!
ー 乃木坂運営が華々しくけたたましいメディア戦略リソース割きを4期生中心へとシフトする間にも
乃木坂ちゃん個々の内面のストーリーは見え難いバックヤードで日々、個々に進行しています。
そしてそれはもはや「3期生は3期生で」「4期生は4期生で」「卒業する人は後輩の後押しを」という
運営には扱い易い、都合のいい括りの枠をはみ出すものとなっています。
今再び、アンダーに、さらには選抜/アンダー無関係に
スポンテニアスで闊達な武の発露の場を開くなら、
『工事中』にも『BINGO!』にもできない、かつアンチをぐうの音もなく黙らせるコンテンツを、と
ファンなら、なんなら不貞腐れ転向セミ・アンチですら、望んでいるにちがいないのです。
のぎ天よ、乱世に咲いた大輪よ
ただ一輪だけで天に昇るがいい
地にあるものはその花のかぐわしさをかぐこともなく
その麗しさを愛でることもない
さらばだ のぎ天
※1
『blt graph.』2019年5月号 vol.43より
